今回はCPUグリスを塗り替えて、どれぐらい効果があるのか検証していきます。私はこれまでリテールクーラー付属のグリスのまま使ってきました。しかし、PCケースが小型なこともあって、以前の計測ではCPU温度が最高99℃に達してしまいました。
そこで、CPUグリスを高性能な製品に交換して温度を下げようと考えました。すでに多くの方が検証結果を共有してくれてますが小型のPCケースを使っている人の参考になればと思います。
購入したもの
このCPUクーラーに合わせるグリスはThermal GrizzlyのKryonautです。
有名な製品なので知っている人も多いと思います。熱伝導率が12.5W/m・Kと非常に高く、80℃の高温でも乾燥しにくいという特徴があります。値段は1グラムで約750円。価格は高いですが冷却能力に期待して購入しました。
グリスの他に、ヘラと塗り方の説明書、写真にはありませんが正規品を証明するシリアル番号が入っていました。偽物が出回っているみたいなので、正規代理店の「親和産業」から購入しましょう。
弊社が正規代理店として取扱をしておりますThermal Grizzly社製のKryonaut 1gにおきまして粗悪な偽造品が、Amazon等のオンラインストアにて正規品に混じって流通しております。
掲載文書の通り偽造品の特徴および販売業者は特定できておりますので、該当商品をご購入の際は粗悪な偽造品をお選び頂かないように十分ご注意願います。
出典: Thermal Grizzly社製 Kryonaut 1gの偽造品に対するご注意 – 親和産業
作業に入る前にパソコンのスペックの概要を紹介します。CPU温度に影響がある部分のみを載せています。
項目 | パーツ | スペック |
CPU | Intel Core i5-8400 | 6コア6スレッド、2.8GHz(4.0GHz)、TDP65W |
CPUクーラー | リテールクーラー | |
ケース | LIAN LI PC-Q21 | Mini-ITX |
ケースファン | Ainex CFZ-120SA | 12cm角×1枚(吸気) |
Intel Core i5-8400 はTDP65WのCPUです。それをリテールクーラーで冷却しています。
PCケースは LIAN LIのPC-Q21を使用しており、これはMini-ITX 搭載可能なケースの中では最小クラスになると思います。底面の12cmファンから吸気を行っていますが、排気は電源のファンかPCIスロットからになるので熱気は籠りがちだと思います。
詳しい構成とベンチマーク結果は以下の記事で詳しく紹介しています。よければご覧ください。
グリスの塗替え作業
それでは作業を始めます。現在の環境での性能計測は予め行っています。
1. CPUクーラーを外す
まず、ケースをあけてCPUクーラーにアクセスします。このケース PC-Q21 は電源がマザーボードの上に付いているのでまず電源を取り外します。
電源を取り外すとマザーボードが見えます。リテールクーラーの足を矢印の方向に回転してピンを緩め、ゆっくりと取り外します。グリスが固まっているとCPUごと外れる可能性があるので優しく取り外します。
CPUクーラーが無事外れました。
外したリテールクーラーの裏面です。グリスの粘度はまだある感じでした。
2.古いグリスを拭き取る
CPUクーラーを取り外したら、古いグリスを取り除きます。ティッシュで大まかに拭き取った後、無水エタノールをつけてきれいにしました。
新しいグリスを塗る
新たに購入したグリス「 Thermal Grizzly Kryonaut 」をCPUに塗っていきます。
私はまず片側にグリスを引いて、
それをヘラで伸ばすようにしました。上の写真の量では少し足りなかったので追加しています。塗り方はいろいろありますが、真ん中に置くだけよりも、広げておくほうが確実に全体に行き届くような気がします。
3.CPUクーラーを取り付ける
きれいにしたリテールクーラーを再び取り付けます。取り付ける際には以下の2点に注意します。
- ファンのコネクタの位置
- ピンを矢印と逆方向に回しておく
プッシュピン式は取り付けやすそうで取り付けにくいですよね。
検証
グリス塗り替えの効果を確認するため以下の検証を行いました。グリス交換前と交換後を比較していきます。
- Cinebench R20
- 高負荷時の温度・静音性計測
Cinebench R20
使用ソフト:Cinebench R20 Windowsのダウンロードはこちら→Microsoft Store
計測方法:マルチコア、シングルコアをそれぞれ連続して3回行い、その平均をスコアとする。
条件\スコア | マルチコア | シングルコア |
グリス交換後 | 2171 (-1%) | 394 (-2%) |
グリス交換前 | 2194 | 402 |
グリス交換後のほうがスコアは約1~2%下がってしまいました。とはいえ、バックグラウンドで実行しているプロセスなどによっても変わるので誤差の範囲だと思います。逆に考えると、交換前でもCPUの性能は十分引き出せていたということが分かりました。
高負荷時の温度・静音性計測
使用ソフト:OCCT
条件:OCCT 20分間(データセット大、スレッド使用数:自動、命令セット:自動)
ファン回転数:CPUファン2900rpm(100%)、ケースファン1300rpm(100%)固定
室温:25℃
温度・動作周波数計測:HWiNFO(負荷開始18分後から19分までの1分間の平均)
条件\スコア | CPUパッケージ温度 | CPU動作周波数 |
グリス交換後 | 79.9℃(-16℃) | 3.6 GHz |
グリス交換前 | 95.9℃ | 3.6 GHz |
CPU温度は高負荷時でも約80℃と以前より16℃低くなりました。CPUは温度が上がりすぎると自動でクロックの制限が入るので熱暴走で壊れることは無いと思いますが、それでも90℃以上は危険な領域です。交換前は平均で96℃、最高では99℃まで上がっていたので無事下がって安心です。
また、無負荷時の温度も40℃オーバーから約36℃まで下がっています。
一方、動作クロックの改善は見られませんでした。Core i5-8400の全コア負荷時の周波数は3.8GHz(非公式)らしいのですが、80℃でも制限が入るようです。Cinebench でスコアの変化がなかったのはクロックが変わっていないのが原因ですね。性能を100%発揮させるにはより冷却する必要があることが分かりました。
まとめ
グリスを塗り替えることでCPU温度を大幅に下げることが出来ました。OCCTの高負荷でも最高80℃に抑えることが出来たので一般的な作業であれば十分冷却できそうです。
ただし、今回もファンは最高回転固定で行いました。静音化のためには回転数をなるべく落としたいのですが、最高回転で約80℃なので、これ以上冷やすにはCPUクーラーを交換するしかなさそうです。
ということで、次回はリテールクーラーから別のCPUクーラーに交換したいと思います。
では、また!
コメント