【ディンギー乗りへ】もやいを止めてスプライスしよう

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ヨットを始めるとおそらく初めに教わる結びかた「もやい結び」。汎用性が高い結び方で、あなたの船にも1つといわず10箇所ぐらい使っているのではないだろうか。しかし、もやい結びに限らず、結ぶという行為はロープの性能を著しく低下させることが知られている。では、どうやって結ばずにロープを繋ぐのか。そこで出てくるのが「スプライス」だ。この記事では結ぶことのデメリットとスプライスの魅力について紹介したいと思う。

結ぶことのデメリット

なぜ結んではいけないのか。その理由として、以下の2点があげられる。

  • 結び目がロープの強度を低下させる
  • 結び目がロープが伸びる原因になる。

それぞれについて詳しく説明する。

結び目がロープを70%弱くする

MARLOWのYouTube動画では、結び目がロープ強度を70%低下させると述べている。なぜ、これほど低下するのか。それは負荷のかかり方にある。

上の画像を見てわかるようにもやい結びではロープが直角に交わっている矢印の箇所で負荷を受け止めている。一か所に負荷が集中するためそこが耐えきれず切れてしまう。

対してスプライスでは直角に交わる箇所はなく、入れ込んでいる部分全体で負荷を分散している。そのため、強度を大きく損ねることがない。

※スプライスの構造については別の記事で詳しく説明する。

また、SAMSONロープの公式ページ「HOW TO SPLICE ROPE」にも以下のように書かれている。

出典: SAMSON 「HOW TO SPLICE ROPE」

要約すると「SAMSONはロープの端の加工方法としてスプライスを推奨する。結び目はロープの強度を著しく低下させる可能性があるが、スプライスは多くのケースにおいてロープの強度を100%生かすことができる。」となる。

ディンギーで一般的に使用されるシングルブレード(Dyneema®SK78、直径3mm)の強度は750㎏だ。 仮に、結ぶことによる強度の減少率を70%とすると、破断強度は750×30%=225㎏まで低下する。225㎏でも通常の使用では切れることはないと思われるが、突然の衝撃などでそれ以上の負荷がかかると破断に繋がる可能性はある。

結び目が伸びの原因になる

結び目には伸びるという欠点がある。結んだ直後の結び目は完全にロープが密着していない。そのため、負荷がかかるとより締まることにより伸びが生じる。フットベルトやセンターボードの昇降システム、470のトッピングなど、一時的に力が加わる箇所や正確な位置決めが求められない箇所は多少伸びても構わない。

しかし、テンションやバング、メインシートといった大きな力が加わり、繊細な出し引きが求められる箇所においては伸びることが船の性能に大きく影響すると考えられる。スプライスも加工直後は多少伸びるが、しっかりとテンションをかけることでそれ以降の伸びを少なくできる。一度スプライスをすれば、艤装のたびに結ぶ必要がなくなるため、伸びる要素を減らすことができる。

スプライスのメリット

上記でも少し述べたがスプライスをすることによるメリットとして以下の3点が挙げられる。

  • 軽量化できる
  • 艤装時間を短くできる
  • トラブルを防ぐ

軽量化できる

結び目をスプライスにすることで強度の低下を最小限に抑えることができる。これにより、性能を落とさず一回り細いロープに変えることができ、結果として船の軽量化につながる。例えば、20mのロープを4㎜から3㎜にすると約80gの軽量化になる。たかが数グラムと思うかもしれないが、水を含むと重量差はさらに大きくなる。

艤装時間を短くできる

艤装の中で結ぶという行為にどのくらいの時間を割いてるだろうか。1か所10秒なら6か所ぐらいあるとして1分はかかっている。解装時も同様だ。結び目をスプライスにすることで時間短縮につながる。練習により多くの時間を割くためにも工夫してみる価値はある。

トラブルを防ぐ

結んでいると当然ほどけるリスクがある。一方、適切にスプライスしていれば取れてしまう可能性は低い。また、ヨットに乗っていると結び目がどこかに引っかかって操作に支障がでることがあると思う。その点もスプライスであれば出っ張りがないのでスムーズな操作が可能だ。このように、不意なトラブルを防ぐことができる点もスプライスのメリットだ。

スプライスのデメリット

スプライスのデメリットはハードルの高さだろう。ハードルを高いと感じる原因は以下の2点にあると思う。

  • 道具がない
  • 加工の方法がわからない。

しかし、どちらも容易に手に入れることができる。

スプライスに必要な道具

スプライスに最低限必要な道具は以下の5点。

  • Splice Fid(ニードル、フィズ)
  • Splice Wire(スプライス ワイヤー)
  • Whipping Twine(ロウ糸)
  • 油性ペン
  • マスキングテープ
Splice Fid(ニードル、フィズ)
Splice Wire(スプライス ワイヤー)

Whipping Twine
出典: PREMIUMROPES

画像を載せた3点はヨットショップでないと手に入れにくいが、3000円あれば一通り揃えられる。それに、道具は部活で共有できる。みんなで割ればどうってことない金額だ。

スプライスの方法

加工方法について、ここでの説明は省略する。しかし、ネット上には多くの情報がある。日本語の情報は少ないが、YouTubeで「rope splice」で検索すれば、海外の動画が出てくる。英語がわからなくても映像だけでやり方は何となくつかめると思う。スマホを持っている人はPremiumRopesがアプリをぜひインストールしてみてほしい。手順を一つ一つ丁寧に説明しているので自分のペースで進めることができる。興味がある人は下のリンクからチェックしてほしい。

Premium Ropes:Rope splicing App

まとめ

結ぶことのデメリットとスプライスをすることのメリットデメリットについて説明してきた。必ずしも結ぶことが悪いわけではなく、適材適所だと考える。しかし、ヨットがロープを使って船を制御する競技である以上、ロープの性能を最大限生かすことが結果にもつながるはずだ。船をもう一段階アップグレードしたいなら、ぜひスプライスに挑戦してみてほしい。

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