こんにちは、オニオンです。ただいま、キーボード沼に浸かっております。
今回は自作キーボードに使用しているスイッチに潤滑油を塗ってみました。潤滑油をぬる行為をルブ(Lube)といいますが、スイッチを分解したり、ぬるための潤滑油が必要になったりと少しハードルが高い気がします。でも、ルブをしてみたい、ルブをして打ち心地がどうなるのか見てみたい!、という衝動が抑えられませんでした。今回はなるべく専用工具を使用せずに、サクッとルブをしたいと思います。
ルブをすると何が変わるの?
ルブはキースイッチの内側のスイッチの軸やバネなどに潤滑油をぬることです。これによって以下のような効果があると言われています。
- 押し込みがなめらかになる
- 擦れていたことによる音が無くなり静かになる
これらは特にリニア軸において効果があるようです。逆にタクタイル軸ではルブによってタクタイル感が薄れてしまうようで、必ずしもルブで打ち心地がよくなるというわけでは無いそうです。
また、粘度の高いルブを塗りすぎると、抵抗が増えてしまいネチャネチャ感が出てくるらしいのでなるべく薄く塗るのがポイントです。
使用するもの
今回の作業で使用するものはこちら。
- キースイッチ ・・・ 分解される張本人
- 細いマイナスドライバー ・・・ スイッチ取り外し用
- 精密ピンセット ・・・ スイッチ分解用
- シリコングリス ・・・ 潤滑油代わり、粘度高すぎ?
- 筆、ブラシ ・・・ 100均のアイライン用ブラシ
▼キースイッチ以外の出演者たち。左から100均のアイラインブラシ、シリコングリス、ピンセット、マイナスドライバー
世の中にはキースイッチ引き抜き工具やキースイッチオープナーといった専用工具があります。これらを使うとより簡単にスイッチの取り外し、分解ができます。
ただ、マイナスドライバーやピンセットで代用できるので今回は専用工具は使わずに作業します。
筆についてもセリアでアイライン用のブラシを買いました。細かい部分に薄く塗る必要があるので、できるだけ細いブラシが塗りやすいと思います。
ルブとは直接関係ありませんが、PCBを取り外すためのプラスドライバーやキーキャップ引き抜き工具も使用しています。
また、作業にあたって以下の動画、サイトを参考にしました。
Taeha Types さんは以前スタビライザーを静音化したときのも参考にさせていただきました。2つ目の Self-Made Keyboards in Japan は自作キーボードに関する濃い情報がぎっしり詰まっていて見ていて飽きないサイトです。
作業開始
それでは作業を開始します。
0.キースイッチを取り外すまで
すでに組み立てているキーボードのスイッチをルブするので、まず、キースイッチを取り外すところまで進めます。パーツから組み立てる場合はキースイッチの分解から始められます。
▼まず、キーキャップをすべて取り外します。
取り外しにはキートップ引き抜き工具を使用しました。
▼次にPCBを固定しているネジを外してケースからPCBを取り出します。
PCBが取り外せたらスイッチをPCBから外していきます。本来ハンダ付けされているのでスイッチの足一つひとつハンダを吸い取っていく必要があります。私のキーボードはホットスワップというハンダ付け不要でスイッチを取り付けられるPCBを使用しているのでプレートごとガバッと外せます。
▼PCBとスイッチが外せました。
ここまでくればスイッチを外せます。
▼スイッチの上下中央にあるツメでプレートに固定されているので、2本のツメを細いドライバーなどで押しながら持ち上げると簡単に外れます。
全68個のスイッチが外せました。
1.キースイッチを分解する
いよいよルブの作業に入っていきます。取り外したキースイッチを分解し、ハウジング、ステム(軸)、バネに分解します。
ハウジングは左右に2つずつ、4つのツメで固定されています。
▼片方の2つにピンセットを差し込みツメを外します。
少し浮き上がるので反対側も同じようにピンセットを差し込んで外します。
▼ハウジングが外れて分解できました。
2.ルブを塗る
ルブは摩擦が発生している箇所、つまりステムとハウジングが接触している箇所に塗布します。
以下の記事はスイッチをルブするために接触している箇所を調べています。
擦れている箇所をまとめると以下の5つになります。
- ハウジング下部 金属端子の左右の突起(スイッチのオンオフを行う部分)とそれに接触するステムの箇所
- ハウジング下部の左右のレールの内側とそこに接触するステムの箇所
- ハウジング下部のバネ受けの内側とそこに入るステムの軸
- ハウジング上部の内側面とステムの外周側面
- スプリング
▼接触している箇所
スプリングについてはステムなどと強く擦れている部分は無いそうですが、ルブをすることで静音性に効果があるそうです。
塗った箇所ごとの効果を確認するために以下の5パターンで塗り分けたスイッチを作り押し心地を試してみました。
②レールとスライダーのみ | これだけでも結構変わった。 |
②レールとスライダー+①金属端子 | ②のみとそんなに変化ない。多少ノイズが減った気がする。 |
②レールとスライダー+③軸 | ②のみとそんなに変化ない。 |
②レールとスライダー+④外周側面 | さらにノイズ減った。効果が一番感じられる。 |
②レールとスライダー+⑤バネ | ②のみとそんなに変化ない。 |
スプリング以外の全箇所 | 初期状態とは比べ物にならないぐらいなめらか。 |
いろいろ試した結果、スライダー部分に塗るのとステムの外周に塗ったときに効果が感じやすかったです。
スプリングに関してはいまいち効果がわからなかったので、スプリング以外の4箇所にルブすることにしました。
実際にする際はこのようにいろいろ試してみて、自分にあった打ち心地を見つけるのをおすすめします。
塗る箇所が分かったので後はひたすら塗っては組み立て、塗っては組み立ての繰り返しです。粘度の高いシリコングリスを使っているのでなるべく薄く塗っていきます。
~2時間後~
68個ルブ終わりました。長かった。Youtube見ながら無心でやりきりました。
一部のキーはルブをしてもバネのシャキシャキ感、少し高音のノイズが残っていました。それらはもう一度分解してスプリング周辺へもルブを塗布することでなめらかになりました。
3.キーボードを組み立てる
スイッチが完成したので、後は元に戻していくだけです。ホットスワップ対応なので組み立てるときもスイッチをPCBに差し込むだけで導通します。この簡単さはキーボードをいじるなら必須だと思います。対応しているPCBの配列のバリエーションが少ないのが欠点ですが、段階的に自作キーボードを仕上げていきたい人はホットスワップおすすめです。
話がそれましたが、スイッチの組み込み、キーキャップのはめ込みが完了しました。
効果のほどは?
前評判の通り大満足です。スイッチ単体でも感じていましたが、キーボードに組み込んでタイプすると改めてルブの効果が感じられます。スコスコ感が増し、スイッチの押下圧も明確に軽くなりました。
また、擦れていた感触が無くなり、バネの反響音も軽減されたので打鍵音が静かになりました。静音赤軸との相乗効果でまるで静電容量無接点方式のスイッチかのようです。まあ、静電容量無接点方式のキーボードはセブンのATMぐらいでしか触ったこと無いんですけどね。
粘度の高いシリコングリスを使用したので粘り気が出てしまうかと心配していたのですが、薄く塗ったからかネチャネチャ感は全く感じません。キーボード用として販売されている潤滑油は3グラムで約1000円するのに対し、シリコングリスSuperLubeは85グラムで1500円程度で購入できます。また、シリコングリスはキーボードだけでなくいろいろな箇所の潤滑に使用できるので個人的にはおすすめです。
なぜかアダルト指定されてるSuper Lube(スーパールブ) へのAmazonリンクは以下↓。
まとめ
静音赤軸のスイッチを分解してルブしてみました。合計4時間ぐらいかかりましたが、それに見合った効果はありました。打鍵感がなめらかになり、静音性も向上しました。気に入ったスイッチをルブでさらに良くするのは、キーボードを育てているかのような満足感があります。
打鍵感に満足していないそこのあなたリアルフォースやHHKBを買うのもいいですが、スイッチをルブしてみると化けるかもしれませんよ。
では、また!
コメント