今回はスプライスの基本であるアイスプライスの作り方について説明する。アイスプライスができると様々な部分に適用できるのでぜひ習得してほしい。
アイスプライスが使える箇所
アイスプライスはロープの端に輪っかがあるというもやい結びと同じ構造をしている。そのため、もやい結びをしている箇所のほとんどに使うことができる。頻繁に付け外しを行う場所はもやい結びのほうがいいこともあるが、多くの面でスプライスが優れているので、特に負荷がかかりやすいテンションやバング、メインシートにはスプライスをおすすめする。
もやい結びのデメリットとスプライスのメリットについては記事を書いているので参考にしてみてほしい。
準備するもの
アイスプライスをするために以下のものを準備する。
- シングルブレードのロープ(今回は直径3mm)
- 定規
- フィズ(細いもの)
- スプライスワイヤー
- ペン
- ハサミ または カッター(よく切れるものが望ましい)
今回はシングルブレード、直径3㎜のロープを使用する。
フィズは外径4mmの細いものが使いやすい。
ロープの切断にはハサミを使用する。ロープを構成しているダイニーマという繊維が非常に硬いのでよく切れるハサミを準備しておこう。それでも何度も使用していると徐々に切れ味が落ちてくるので刃が交換できるカッターやロープ専用のハサミ「SCISSORS D16」がおすすめ。
出典: コスモマリン株式会社 – D-SPLICER D16 ロープ用ハサミ
作業開始
今回の説明は以下の動画を参考にしている。動画も合わせて見てほしい。
Premium Ropes 7.2.1 Lock splice in single braided Dyneema rope (both ends free)
では作業を開始しよう。
マーキング
まず初めにマーキングを行う。
スプライスをするときにまず悩むポイントがロープを内側に入れ込む長さをどれくらい設けるかということだ。入れ込む長さによってスプライスの性能が変わってくる。 短すぎるとスプライスが抜けやすい、急に太さが変わってしまうといった欠点がある。逆に長過ぎるとロープが太くなっている部分が長くなってしまう。
適切な長さはPremium Ropesの動画によると
入れ込む部分の長さ[mm] = ロープの直径[mm] × 60
7.2.1 Lock splice in single braided Dyneema rope (both ends free)
らしい。今回は直径3mmのロープを使用しているので、
ロープの直径3mm×60=180mm=18cm
となり、18cm入れ込む必要があることが分かった。ロープの端から18cmの部分にマジックで印をつけ、この印をAとする。
次に、作りたい輪のサイズに合わせたマーキングを付ける。ロープを折り曲げて作りたい大きさの輪を作る。このとき印Aと重なっている部分にマーキングをする。新しいマーキングを印Bとする。
これでスプライスの準備、マーキングは完了だ。
編み込み①
マーキングができたらフィズを持って加工を開始しよう。まず、フィズを印Bに差し込む。このときの注意点は2つ。フィズをロープの真ん中に通すこと、ストランドを傷つけないことだ。
ストランドとは…
ロープを構成している細いロープ。ストランドが編まれてロープが作られている
今回使っているロープは12本のストランドで作られている。ロープの真ん中を通すということは、ストランドが6本+6本に分かれるようにフィズを差し込むということだ。さらに1本のストランドがバラけないようにストランドの間にフィズを差し込むようにしよう。コツはフィズを差し込む前にロープの網目をしっかりと緩めておくことだ。そしてフィズをどこを通すか考えておこう。
次に短いロープの端をフィズに差し込む。トンネル状になっている部分までしっかりと差し込もう。
ロープがフィズに入ったらフィズを抜ききる。これでロープに輪っかができているはずだ。ただし、この状態では簡単に抜けてしまうので、次の工程でこの輪っかを緩まないように固定する。
編み込み②
次は印Aにフィズを差し込む。と、その前に輪っかの部分のロープがねじれていないか確認しよう。ねじれているとロープに余分な力が加わる原因になる。
ねじれが取れたらフィズを差し込む。先ほどと同じでロープの真ん中を通ることに加えて、フィズを差し込む向きにも注意が必要だ。言葉では説明が難しいが写真を参考に矢印の方向に差し込むことでロープがねじれない。
フィズが差し込めたら長い方のロープの端をフィズに差し込む。
フィズを抜ききると編込みが2箇所できている。
輪っかと長いロープを持って引っ張る。引っ張るほどに編み込みが締め付けられ、緩まなければ大丈夫。
端を入れ込む
次に短く余っているロープの端をもう一方のロープの内側に入れる作業を行う。使うのはスプライスワイヤーだ。直径が6mm以上のロープであればフィズでも可能だが、今回は3mmなのでスプライスワイヤーが必須だろう。
まず、長いロープに短く余っているロープを添わせて長さを確認する。そして、その長さよりも5cm程度長い位置にワイヤーを差し込む。このときもストランドを傷つけないように注意が必要だ。
ワイヤーの先端を差し込んだらロープの真ん中を通していき、編み込みの直前まで進ませる。次にワイヤーの先を外に出すのだが、抜き出す位置は短く余っているロープの側でなるべく編み込みに近い部分から出すようにする。短く余っているロープの側から出すことでねじれを無くし、また、編み込みの近くから出すことで緩みにくくする効果がある。
次に抜き出したワイヤーに余っているロープの端を通し、ワイヤーの先端に挟み込む。
固定されたらワイヤーを引き抜いていく。引き抜くときのコツは、ワイヤーの先端が入るまでは輪っかとワイヤーを持って引っ張り、ワイヤーの頭が入ればロープを緩めながら通していく。
引き抜いている途中でワイヤーに挟んでいるロープ抜けてしまったときは、一つ前の手順に戻って挟み込む部分を長くする。逆に入りにくい時は挟み込んでいる部分が長いので短くする。
ワイヤーの先端までうまく抜けたらロープをワイヤーから外す。外したら内側を通っているロープの端と輪っかを持って引っ張り、編み込みの部分にあるロープの余りをなくす。
テーパー
次はテーパーを行う。まず、内側を通っている短いロープをできる限り引っ張り出だす。
そして、入れ込んだ部分の長さ(今回は18cm)の半分の位置(今回は端から9cmの位置)からストランドを1本抜き取る。フィズを使うと抜きやすい。そのストランドを抜き取った位置と1~2cm離れた部分からストランドをもう1本抜き取る。これをロープの端まで繰り返し、徐々にロープを細くしていく。
抜き取ったストランドはハサミで根本から切断する。ロープの先端を斜めにカットし、先端も急激に細くならないようにする。
伸ばす・プレテンション
テーパーした短いロープを外側のロープの中に入れ込んでいく。輪っかと外側のロープのダブついている部分を持って引っ張ると短いロープの端が吸い込まれるように入っていくはずだ。
これがスプライスで一番の快感ポイントといっても過言ではない。
余っていたロープ全体が入ったらロープを伸ばす。これによって、ロープが摩擦で抜けにくくなる。
最後まで入らなかったとき
ダブつきをとってもロープが入り切らずに先端が飛び出してしまうことがある。こんなときはロープの端を持って少し取り出し、ハサミでもう一度斜めにカットしよう。短くして再度入れ込み、先端までしっかり入れば完成だ。
以上で作業は完了。
作業終了 – チェックポイント
完成したら以下のチェックポイントを確認する。
- ねじれていない
- 編み込みの間隔が小さい
- テーパーの長さが十分確保されていて段差がない
ねじれていない
ねじれはロープを変形させ、余分な負荷をかけることにつながる。ねじれをチェックするポイントは2箇所。輪っかの部分と編み込みの部分だ。
輪っかの部分についてはねじれがあると不自然に変形するので、輪っかがまっすぐになっているか確認する。
編み込みの部分についてはV字の編み込みが一直線に並んでるか確認する。
編み込みの間隔が小さい
編み込み①、編み込み②、ロープの端を入れ込む、の作業でできた編み込みの間隔が狭いか確認する。間隔が大きいとスプライスが緩んでしまう原因になる。編み込みが等間隔で3mmロープであれば1cm以内にまとまっていれば緩むことはないだろう。
テーパーの長さが十分確保されていて段差がない
最初に確保した入れ込みの長さ18cmは確保できているだろうか。これはマーキングをしていればおそらく大丈夫なはずだ。そして、外側からロープを触ったときに急激な太さの変化を感じないだろうか。特に入れ込んでいるロープの終わりで急に細くなることが多い。あまりにも段差が大きいと感じたら、一度入れ込んだロープを抜き取って、再度テーパーの工程を行う。
まとめ
ここまでの解説でアイスプライスできただろうか。初めは時間がかかってしまったり、ややこしいと感じるかもしれない。しかし、繰り返し練習することでどんどん早く、上手くなっていくのでこの記事だけでなく動画も参考にしながら諦めずに挑戦してほしい。アイスプライスはいろいろな部分に適用できる上に、他のスプライスにも応用できる基本的な技術が詰まっている。アイスプライスをマスターしてあなたの船をレベルアップしよう。わからない部分があればコメントで教えてほしい。
ではまた。
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